仙台地方裁判所 昭和51年(わ)228号 判決 1976年11月16日
本籍
仙台市本町二丁目四番地
住居
仙台市連坊小路二八六番地
会社役員
被告人
佐藤松七
明治四二年八月一〇日生
主文
被告人を懲役四月および罰金三百万円に処する。
被告人において右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、仙台市連坊小路二八六番地の自宅ほか二か所において、貸金業、電話売買業及び貸家業を営んでいる者であるが、自己の所得税を免れる目的をもつて、実際の収入金額を削減したり、必要経費を水増しするなどし、それによつて得た資金を架空名義の銀行預金として蓄積するなどの不正な行為により、自己の所得を秘匿したうえ、
第一、昭和四八年分の自己の実際の総所得金額が二、二五二万二二二九円でこれに対する所得税額が九八三万六、二〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四九年三月一四日、仙台市中央四丁目五番二号所在所轄仙台中税務署において、同署署長に対し、自己の同年分における総所得金額は四四〇万八、九八五円でこれに対する所得税額が七八万四、〇〇〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額九〇五万二、二〇〇円をほ脱し
第二、昭和四九年分の自己の実際の総所得金額が二、七一四万八、五一六円でこれに対する所得税額が一、一一九万一、〇〇〇円であつたのにかかわらず、昭和五〇年三月一五日、前同所において、同署署長に対し、自己の同年分における総所得金額は四九八万五、一七四円でこれに対する所得税額が七六万七、八〇〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得金額と右申告税額との差額一、〇四二万三、二〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実はつき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官および検察官事務取扱検察事務官(二通)に対する各供述調書
一、被告人の大蔵事務官に対する供述調書(質問てん末書と題するもの。計一一通)
一、佐藤英俊(二通)および二谷信一(三通)の検察官事務取扱検察事務官に対する各供述調書
一、大蔵事務官作成の貸金調査書、電話売買等の調査書、電組関係調査書、銀行関係調査書、経費等調査書、進行年分の電話売買調査書、賃貸料等調査書、償却費調査書、預金調査書
一、大蔵事務官作成の昭和五一年一月一九日付調査報告書
一、大蔵事務官作成の告発書
一、押収してあるメモ帳八冊(昭和五一年押第二二八号の一の一ないし八)判取帳二冊(同号の二の一、二)、総勘定元帳二綴(同号の三の一、二)、領収書等一綴(同号の四)および電話加入原簿登記証明書五通(同号の五の一ないし五)
判示第一の事実につき
一、大蔵事務官作成の納税額計算書(一)
判示第二の事実につき
一、大蔵事務官作成の納税額計算書(二)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は所得税法二二八条一項(一二〇条一項三号)に該当するので、所定刑中懲役および罰金を併科することとし、以上は刑法四五条別段の併合罪なので、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により犯情の重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、罰金刑につき同法四八条二項により、被告人を懲役四月および罰金三百万円に処し、同法一八条により、被告人において右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、右懲役刑につき同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から二年間その執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(出席検察官) 加澤正樹
昭和五一年一一月六日
(裁判官 斎藤清六)